第2回会計税務講座
 はじめての会計処理(基礎実践編)


 ●講師:平野由紀子さん(税理士)
 ●日時:2007.5/23(水) 10:00〜17:00

 


行政や企業並みに、活発に活動をするNPOが増えている昨今。NPOとはいえ、組織である以上現金管理もしっかり行わなければなりません。そのためには、会計の基礎をしっかり把握しておくことが重要なのですが、組織の大きさにかかわらず、会計に戸惑っているところが少なくないようです。
そこで今回は、当プラザで会計の無料相談も担当されている平野由紀子先生をお招きし、会計の基礎とNPO会計について教えていただきました。

そもそも会計の目的は、最終的に収支計算書を作成することにあります。NPO法人は年度末に事業報告書と共に「収支計算書」「貸借対照表」「財産目録」を作成・提出しなければなりません。これは情報公開の観点からも団体の信頼度を左右する重要なものとされています。ですからきちんとした処理を行い、1円でも間違いのないようにしなければならないのです。

予算規模が大きくない任意団体、NPO法人であれば、単式簿記で良いですが、法人税法上の収益事業を行っている場合や消費税の納税義務者に該当する場合は、複式簿記の方が良いと思われます。
複式簿記を採用する場合に、手書きで経理処理をするのは簡単ではないので、パソコンを利用することも良いことです。しかし、パソコンでの会計処理は効率が良いというメリットもありますが、パソコンで処理をする場合には、まめにデータのバックアップをとっておくことが必要であり、場合によっては定期的に出力をしておくことも必要です。

会計において一番大事なのは、やはり現金管理です。会計処理の第一歩であり重要な業務です。現金の確認は毎日したほうが良いのですが、動きがあったときだけ確認をするのでも構いません。小口現金を設けて別の担当者に管理してもらうのも一つの方法です。団体あるいは法人の業種・事業規模に合った管理方法を選択し、そのルールに従い会計処理をすることが大切です。

証憑書、いわゆる領収書の整理の仕方では、月別・日付順に行うのが分かり易くて良い方法です。これ以外にも、科目を日付順・月別・内容別・相手先別に整理したり個別管理したりする方法がありますが、証憑の種類によって使い分けるようにします。
書類の保存は、総会議事録や契約書・設立関係書類などの永久保存が必要なものと、元帳や請求書・見積書・領収書などの一定期間保管が必要とされるものがあります。決算書類の保存は7年とされています。永久保存の文書は、大切な文書ですが、奥にしまい込まず、すぐに見つけられるように整然と分類し、いつでも取り出せるようにしておきます。

次に、具体的な会計処理についてですが、日々の取引の処理を正確に行うことが大切です。日々の取引に係る仕訳のひとつひとつが正確に処理され、その正しい仕訳が集計されて、初めて正しい財務諸表が出来上がる、というしくみになっているからです。
収支計算書、正味財産増減計算書、貸借対照表の3つの計算書を複式簿記により作成する場合は、「一取引二仕訳」が必要となりますが、これは必ずしなければならないものではありません。県のひな型による収支計算書でも問題はありません。

また、NPO法人は、特定非営利活動以外の活動を行う場合には、「特定非営利活動に係る事業収支計算書」と「その他の事業収支計算書」を作成しなければなりません。 更に、法人税法上の収益事業を行っている場合には、これらを更に、収益事業に係る部分と、非収益事業に係る部分に区分しなければならず、4つに区分して会計処理を行うことが必要になります。つまり、特定非営利活動・その他の事業・非収益事業・収益事業の4つのそれぞれにおいて、収支計算書・貸借対照表・財産目録の作成します。全体を把握するために統括表を作成することも必要です。

最後に先生から、「提言」として次の4つを教えていただきました。@仕事上知り得たことは秘密事項である。A常に仕事は「迅速」且つ「正確」に。B代表・理事の片腕になることが大事(関心がない代表や理事には、直接言うことも必要)。C総合力を持った経理担当者になること(自分のポジション以外からの視点を持った上で、代表や理事に発言をする)。金銭管理に携わる中で、自分の立ち位置の確認をするとき、この4つの提言を自らの指針に掲げてみてください。


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