法人格を持たないNPO、いわゆる任意団体は、会員やメンバーに分かるように会計の報告をすれば良いのですが、法人格を取得すれば、県や税務所への提出書類を作成しなければなりません。
NPO法人は、独自の会計基準が規定されているわけでもありません。しかし、基準や様式が規定されていないことから自由であるとも言えません。NPO法人としての報告義務はあるのだから、適切な会計処理の方法を選択し、その報告義務を果たさなければなりません。
今回の会計講座では、初級編として、記帳、入力、整理などの日常業務から理事会、助成金交付先、総会、県、税務所、市税・県税事務所への報告までの実務を易しく、初心者向けに教えて頂きました。講師はNPO会計に詳しい、税理士の平野由紀子さんです。「経理担当の役割は、経理にまつわる情報収集をし、出納帳や伝票は担当以外の者が見てもわかるようにしておくこと、合わない時は隠したりせず、ありのままに表記をすること、トラブルに遭った場合、責任を負わされるのでお金の管理はしっかりとすること」と平野さん。
実際の実務の手順、管理・整理のコツを次の通りにお話くださいました。
[現金管理の手順]
@小口現金用金庫を用意するA入出金の都度、伝票を記票、または現金出納帳へ記帳するB伝票使用の場合には、毎日の〆後、現金収支日報を作成するC実際の現金残高を確認し、金種表を作成する。D現金収支日報または現金出納帳の残高と実際の現金残高を照合するE帳簿残高と実際残高とが一致しない場合には、その現金を追及する。それでも不明な場合には「仮払金」「仮受金」「現金過不足」などの処理をして、残高を一致させる。
※この時必要なものはコインカウンター、伝票、現金出納帳、多桁式現金出納帳、現金収支日報など。
※数日前の日付の領収書を精算する場合には、領収書の日付ではなく、清算した日付で処理し、摘要欄に実際の購入日を記載しておく。
[現金管理のコツ]
それぞれの団体にフィットした管理方法を選ぶこと(例:多くの人が現金にさわる、伝票だけで処理、など)、現金の動きが少ない団体は、現金の動きがあった時だけ実施する、団体内の会計のルールを決定したら、それを守り通すこと。
[証憑書類の整理の仕方]
発行領収書は、複写のものを使用する。発行領収書には、連番を付し、書き損じたものは×印を付けて、これも保存する。交付先は特定出来るように明確に記載する(上様とは記載しない)。領収書を作成した者が解るようにしておく(特定の者のみが発行領収書を作成する、若しくは担当者名を記載する)。糊は3か所くらいに留める(間違ってはがす時に大変なので塗りすぎないように)。収入印紙は3万円以上でも不要。
領収書が取得できない場合(電車代・バス代等交通費、香典費・お見舞い等交際のための支出など)は支払証明書若しくは支払報告書、或いは旅費精算書などの書類を作成し、いつ、だれに、どのような目的で支出したのかを明らかにしておく。また旅費であれば、何のための旅費であったのか、交通機関などを記載しておく。実費相当分の支払いをする場合は、上記のような書類を整備して、交通費、交際費として処理する。
経理担当者は細かい事を追求しなければならないので、責任も大きく大変な業務ですが、そういう立場だと認識することが重要なのです。
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