今回の講座はNPOの会計に詳しい公認会計士、税理士の成田先生をお招きし、団体の内部統制や現金管理の仕組みについて学びました。
社会の課題を解決するために活動しているNPOとはいえ、お金に関する不正が行われるケースは多々あります。実際に担当者による使い込みや、理事・経営者による不正の例も聞かれます。そのようなことが起こるのは、団体内で不正を行うチャンスを作ってしまう背景があるためです。これらを防ぐためには、内部統制の仕組みを整え、運用することが重要になってきます。内部統制とは、内部で相互に牽制しあい、不正が発生してもすぐ発覚するような仕組みを作っていくことです。
具体的な方法としては、毎日の出納を『NPO会計日誌(※1)』で行うことや、『NPO法人の監事の監査チェックリスト(※2)』を活用することが有効です。
『NPO会計日誌』は、不正がおこらないように工夫された出納帳です。例えば、金出納帳の現金残高の下に金種表があり、現金出納帳の残高と実際の残高を合わせやすくなっています。また、経理印と承認印を押すことによって内部統制につなげることができるという特徴があります。
『監査チェックリスト』は、業務と会計それぞれの面で細かくチェック項目が分かれています。業務面では理事の不正についてチェックすることができるので、団体として体制を整えるのに非常に重要です。例えば、「職務執行当事者の権限と責任が明確になっているかどうか」確認するチェック項目があり、その根拠として「NPO法人は企業のようなピラミッド組織になっていないことも多いが、重要な事項については責任者を明確にし、定期的な報告と承認をおこなうことが望ましい」とあります。また会計面では、「日常業務に携わる事務局長等が理事でない場合は、経理担当理事も決めておくべきである」、「仮払金や立替払いはできるだけ速やかに清算する」などの事項が重要です。
日常的な会計業務では、現金はなるべく持たず、持っても○万円と定額にする事や、金庫は代表者のみが開け、鍵もしっかりと管理簿を作り、受渡しの証明を残す事などがポイントとして挙げられます。
このように、ミスや不正を防ぐためには、組織が自己点検できる仕組みを作っていく必要があります。自己点検できる仕組みを作るには、お金に関しては団体内で「厳しい決まりを作っている」「体制が整っている」と周知徹底し、会計上で非常にシビアな雰囲気作りをすることが何よりも大事です。その結果、現金等の管理を心配せず、エネルギーを本事業に注いでいくことができるのです。
(※1)『NPO会計日誌』…NPOのための日誌形式の現金出納帳。
(※2)『NPO法人の監事の監査チェックリスト』…主にNPO法人の監事の監査時に使用。
上記のように内部統制にも便利。
NPO会計税務サポートサイト (http://www.npoatpro.org/potal/)でダウンロード可。
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