12月15日今年最後となるにぎわいサロン『「エール」キャラバン』が開催されました。
主催したのは、高齢者、障がい児、障がい者の人権擁護団体である宮城福祉オンブズネット『エール』(代表荒中)です。
この企画は、エールの設立趣旨を理解してもらうとともに、氷山の一角とされる施設内等での事件事故の原因や問題点究明をすすめていくことを目的に行われました。
当日は、施設関係者、学生を中心に50人を超える参加者が7〜8名のグループに分かれ、事例をもとにそこに潜む人権侵害などの問題点を話し合いました。
一見何気に日常的なやりとりと思われる中に、様々な問題点が隠されており、福祉事業者におけるコンプライアンスルール(注)の確立が急務だということを参加者一同認識した様子でした。
当日話し合われた事例の一部を紹介しますので、どこに問題があるのか考えてみてください。
(注)「コンプライアンス」とは「法令等の遵守」のことであり、「コンプライアンスルール」とは、コンプライアンスを重視した事業の展開を行う上でその構成員が遵守すべき具体的規範をいいます。
宮城福祉オンブズネット『エール』HP
http://www7.ocn.ne.jp/〜lastword/index.html
■その1(言葉の虐待、マニュアル、放置、理解)
登場人物:施設利用者佐藤さんに会いに来た安田さん(知人)と、介護員A
あらすじ:施設の痴呆棟を利用されている佐藤さんに、知り合いの安田さんが面会に来ました。痴呆棟の介護員Aに、面会に来た事を告げ、佐藤さんがどちらにいるか尋ねます。
安田さん:「こんにちは。」
介護員A:「こんにちは、面会ですか?」
安田さん:「はい。佐藤さんに会いに来たのですがお部屋はどちらでしょうか?」
介護員A:「佐藤さんですね。さっきまでそのあたりに・・・」 (と、ホールを見渡すが姿が見えない。)
介護員A:「佐藤さんはその先のトイレのあたりを徘徊されていると思います。」
■その2(人権無視、職権による虐待、誤解)
登場人物:病院の医師、対象者森田三郎さん、梅子さん(三郎さんの妻・入院中)、森田五郎さん(その息子)
あらすじ:森田三郎さんは、ホームヘルパーの家事援助を受けて、一人で生活しています。杖をついてやっと歩いているのですが、入院している妻の梅子さんの所へ、毎日のように見舞い行きます。自分で作ったおかずや、ヘルパーに作ってもらった自分のおかずまで持って、500メートルぐらい離れたS病院までなんとかたどり着きます。
病院の看護師から、食中毒等の心配があるため食べ物は持ってこないよう何度も注意されていますが、早く良くなってほしいという想いがあり、いう事を聞き入れません。娘さんや息子の五郎さんも、何度か病院から注意を受け、父の三郎さんに注意しますが、全く聞いてもらえず困っています。三郎さんは、若い頃梅子さんに苦労をかけたので、今出来ることをしてあげたいと思っているようです。ある日、五郎さんがS病院の医師から呼ばれました。
医師:(見舞いの時に食べ物を持ってくることには触れず、)「三郎さんは、かなり痴呆が進んでいるようですね。」
五郎さん:「そうですか。」
医師:「いい病院があるので、紹介しましょうか?」
五郎さん:「でも、あの性格だから、勝手に家に帰って来ると思います。」
医師:「大丈夫です。SS病院かMM病院なら、勝手に出てくる事は出来ませんから。」(と言って、医師は家族に精神病院を紹介しました。)
五郎さん:(心配してくれた医師に感謝しているようです。三郎さんの了解無に5箇所の介護保険施設に入所申込みをしていましたが、病院を紹介されたのですべてキャンセルしました。)
※ 氏名、名称はすべて仮名です。
|