第1回会計税務講座
 NPOのための会計初級講座

 〜帳簿の付け方と領収書などの整理を学ぶ〜

 ●講師:平野由紀子さん(税理士)
 ●日時:2008.5/20(火) 13:00〜17:00

 
5月20日会計講座の様子
5月20日会計講座の様子
 会計は、その内容や処理の方法が誰でも分かるよう、ある程度のルールに沿って進めていくのが一般的です。また、NPOにとっての会計は、自分たちの活動をより理解してもらい、共感してもらう指標となるので、分かりやすく信頼される会計書類を作成する必要があります。

 この講座では、『NPO会計マニュアル』をテキストに、NPO会計の概要、勘定科目の設定、帳簿の付け方などを学びました。なかでも、領収書などの証憑書類の整備、現金残高の確認、そして帳簿のつけ方の具体的な解説は、すぐに日常業務に活かすことができる内容でした。

■証憑書類の整備
 会計記録には、証拠の裏づけが必要であり、領収書は外部の人が支出を証明したものであるため、証拠としての価値が高くなります。しかし、香典や祝金などの支出には領収書はもらえませんし、もらっても紛失してしまうこともあるかもしれません。そのような場合には、現金出納帳に細かく支出の内容を記帳、そして内部の発行資料である「支払証明書」を作成し、それにその時の状況がわかる資料(招待状や挨拶状など)を添付すると良いでしょう。ポイントは、「外部の人が見て、この支出はNPOとして支出したことが間違いない」と判断できる資料を準備することです。
 電車やバスの交通費の領収書ももらえないことが多いですが、この場合には「交通費精算書」に明細や行動の詳細を記録しておくと良いでしょう。そして現金出納帳には精算書ごとに合計金額と請求者の氏名を記入し「詳細や交通費精算書を参照」とすると分かりやすくなります。現金出納帳から最終的な証拠資料までたどりやすくなるからです。
 また、諸々の経費を精算する場合に、領収書だけを預かっても、担当者は何に使われたのかが分からず管理が大変です。そのような場合には経費を支払うスタッフに「経費精算書」に勘定科目を記入してもらい、領収書も経費精算書の裏に貼るようにすれば、記帳が非常にスムーズになります。また、経費精算書に責任者が「承認印」を押印した上で出金すると、出金についての責任も明確になります。

■現金の確認
 現金出納帳の金額と実際の金額が合わないときは、どうしたらいいでしょうか。会計担当者が個人でお金を出し入れして合わせるようなことは、信用を失う行為なので、決してしてはいけません。現金を合わせるためには「毎日現金出納帳の残高と実際の残高があっていることを確認する」ということ以外に近道はありません。現金が合わなくなってもその日に確認すれば、原因も探りやすくなります。また、適正に管理していることが外部からも分かるように現金残高と併せて金種表にも記入すると良いでしょう。
 それでも現金が合わなくなった場合は、合わなくなった時点で差額を「現金過不足」勘定科目を使い、いつの時点でいくらの現金が合わなくなったのかをはっきりさせます。実際の残高を現金出納帳に合わせることはしません。その後、原因が分からなければ、決算時に「雑収入」「雑損失」などの勘定科目に振替えます。

■帳簿のつけ方
 現金出納帳に記入する日は、「現金が動いた日」です。まずは自分たちの団体の「現金とは何を指すか」を確定しましょう。金庫を使っていればその中のお金が「現金」であり、袋に入れて持ち歩くのであれば、その中のお金が「現金」です。その現金が動いた日付で記帳します。つまり、立替え払いなどで購入した場合は、購入した日ではなくそれらを精算した日が「現金が動いた日」となります。領収書の日付で記帳してしまうと、現金の実際の残高と合わなくなってしまいます。
 現金出納帳には、日付、勘定科目、金額、残高を記入するほか、「摘要欄」には「どこからの入金、出金だったのか」「どのような内容だったか」を記入します。それ以上に大切なことは、帳簿から領収書や請求書などをたどれるようにすることです。帳簿に詳しく書いても、その収入や支出の根拠を証明することができなければ意味がないからです。

 講座では、会計初心者が会計担当者になった場合を想定して作成された『NPO会計マニュアル』に沿って基本的なところを学びました。(テキストは、HP(http://www.npo-support.jp/npo_support/npo_kaikei_manual.php)からダウンロードできるほか、みやぎNPOプラザではより使いやすい冊子を販売中)
 講座の最後は、「NPOにとって会計はとても重要ですが、活動の詳細を伝えるためには事業報告書もとても大切。これら2つが揃ってはじめて団体の活動内容をより具体的に伝えることができるのです。」という講師の言葉で締めくくられました。


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