第1回会計税務講座
 NPOのための会計初級講座
  〜帳簿の付け方と領収書などの整理を学ぶ〜

 ●講師:平野由紀子さん(税理士)
 ●日時:2009.6/9(火) 13:00〜17:00

 
6月9日会計講座の様子
6月9日会計講座の様子
 NPO法人の場合、事業年度終了の日から3ヶ月以内に、事業報告書、貸借対照表、財産目録、収支計算書、役員名簿および10名以上の社員名簿を所轄官庁に提出しなければなりません。このなかの3つの計算書類「貸借対照表」「財産目録」「収支計算書」を作成することが会計処理の最終目的です。
 任意団体の場合は特に計算書類は定められていません。団体で決めたルールに沿って計算書類を作成して良いです。

■「貸借対照表」「財産目録」「収支計算書」とは?
 「貸借対照表」は、ある一定時点における資産、負債、純資産の状態を表す計算書類です。「財産目録」は期末時点で所有しているすべての資産及び負債を具体的に記載した書類であり、貸借対照表の内訳明細書で、決算の時期に貸借対照表と照らし合わせながら作成します。「収支計算書」とは収支を1会計年度分(○月○日〜○月○日まで)集計した計算書類であり、活動実績を表す計算書類です。
 これらの計算書類の作成が最終的ゴールであることを意識しながら、日々の会計処理を行いましょう。

■勘定科目の設定方法
 勘定科目の決め方に決まりはありませんが、一般的なルールに沿って設定したほうが分かりやすいです。NPOの計算書類はその活動を伝えるためにも重要なものなので「どう報告すると分かりやすいのか」という視点で、団体の状況にあった勘定科目を設定する創意工夫が必要です。
 支出については、企業会計では、「売上原価」「販売費及び一般管理費」などに分けますが、NPOでは「事業費」と「管理費」に分けることが基本です。事業費とは、事業実施に伴い支出したもので、ミッション達成のために直接使用した支出。管理費とは、組織全般を支える支出です。事業費(支出)が多い場合は、収支計算書が見にくくなる場合もあるので、収支計算書(全体)を簡単に記載し、そのほかに事業費明細書を作成したほうが分かりやすくなります。そういう工夫も大切です。

■帳簿の付け方
 会計帳簿における主要帳簿は、「仕訳帳」と「総勘定元帳」です。
 「仕訳帳」とは日々の取引を記録した帳簿で、「総勘定元帳」とは、勘定科目ごとに取引を記録して集計したもので、これらから誘導的に収支計算書と貸借対照表を作成します。
 「現金出納帳」には、現金が動いた日付をもって入出金を記載します(「現金」を実査しておく必要があります)。この「現金」が移動した日の日付で現金出納帳を記帳せず、領収書の日付で記帳していると、現金の実際の残高と合わなくなってしまうので要注意です(立替払いなどをしたときは、それを精算した日付けで記帳します)。また、現金出納帳には、日付、勘定科目、金額、残高のほか、摘要欄にその詳細を記入すると分かりやすく、帳簿から原始資料(領収書や請求書など)にさかのぼれるように整理しておくことが重要です。

■現金が合わないときは・・・
 現金出納帳の金額と実際の金額が合わなくなることは避けたいことですが、合わなくなったときに、会計担当者個人の判断で現金を出し入れして合わせるようなことをするのは、信頼を失うことにもなりかねません。
 それでは、現金が合うようにするにはどうしたらよいでしょうか?それは日々、現金出納帳の残高と現金の残高を合わせる地道な作業のほかに道はありません。現金を適正に管理していることを外部の人から見てもわかるように、確認作業の時に「金種表」をつけると良いでしょう。
 それでも現金が合わなくなった場合は、「現金過不足」という勘定科目を使い、いついくら合わなくなったのか差額を明記します。その後、原因が分からなければ決算時に「雑収入」「雑損失」などの勘定科目に振り替えます。

■ミスや不正を防ぐ基本的なポイント
 こういった日々の経理でミスや不正が生じないようにするためには、一人に会計のすべてを任せないということが最大のポイント。ひとつのことに複数の人を関係させるシステムづくりが有効です。通帳管理者と記帳をする人を別の人にしたり、一定額以上の支出については複数の担当者の承認を要するという仕組みづくりも有効です。


 「会計処理の方法や手段はいろいろあります。ひとつの方法や手段のみが正解という訳ではありません。それぞれの団体にあった方法を見つけることが大切」とのこと。いずれにしても重要なポイントは、正確で、かつ団体の活動内容が伝わる計算書類をつくること。今回の講座では、このつくり方の基本や注意点を学ぶことができました。

▲ページトップへ