平成23年度 第1回会計税務講座
はじめてのNPO会計

 ●講師:平野由紀子さん
       (税理士・NPO会計税務専門家ネットワークメンバー)
 ●日時:2011.6.2(木) 13:30〜16:30

 
 
6月2日会計講座の様子

宮城県で、先駆的且つ積極的にNPO会計に取り組んでいる税理士の平野由紀子先生を講師に迎えて、NPO会計の概要、勘定科目の設定、帳簿の付け方などのNPO会計の基本を学び、昨年7月に発表された「NPO法人会計基準」にも触れる講座を行いました。

NPOにとって計算書類は、自分たちの活動をより理解してもらい、共感してもらう指標となるので、解りやすい書類を作成する必要があります。

『NPO会計の概観』
NPO法人は、NPO法により事業年度終了の日から3ヶ月以内に事業報告書、貸借対照表、財産目録、収支計算書、役員名簿および10名以上の社員名簿を所轄官庁へ提出しなければいけません。この中の【貸借対照表】【財産目録】【収支計算書】を「計算書類」といいます。

★貸借対照表
その法人が所有する預貯金やそれ以外の資産などがどれだけあるのか、どれだけの負債があるのかを報告するために作成する書類です。営利企業においても作成されるもの。瞬間の(通常は“期末”時点での)資産、負債。

★財産目録
期末時点でNPO法人が所有しているすべての資産及び負債を具体的にその種類、数量、価額を付して記載した書類。貸借対照表の内訳明細書ということができ、企業会計にはない書類です。

★収支計算書
収入と支出を明らかにして1会計年度分を集計しNPO法人の資金の動きを表わす計算書類です。


『勘定科目の設定』
○事業費と管理費はどう違うのか?
企業会計では、支出を「売上原価」「販売費及び一般管理費」などに分けますが、NPO会計では「事業費」と「管理費」に分けることが基本です。事業に直接必要な費用であるならば「事業費」であり、NPOの運営に係る費用であるならば「管理費」です。

★事業費
事業実施に伴い支出したもので、ミッション達成のために直接使用した支出
(例)NPOの掲げるミッションの事業に専従している職員がいる場合には、その給料など
★管理費
組織全体を支える支出
〈例〉経理や総務を専従している人の給料など。その他、総会開催や理事会開催にかかる費用、経理上の費用、登記関係の費用など。


○共通経費はどのように分けるのか
事業費と管理費の共通経費については「合理的な比で按分」することになります。 一度、「合理的な按分比」を決めたら毎事業年度継続して適用し、みだりに変更しないよ うにします。
〈例〉家賃、水道光熱費など→面積比  福利厚生費など→職員数比  燃料費、車両費→使用頻度比

『帳簿のつけ方』
○現金出納帳に記帳する日はいつか?
現金を管理している人は、「現金」が移動する日の日付で現金出納帳を記帳します。領収書の日付は「摘要」などに書き、遡って現金残高を修正するようなことはしてはいけません。記帳した後は、帳簿の残高と現金の実際の残高が一致することを確認します。

○領収書がない場合にはどうしたらいいのか?
現金出納帳にその支出の内容を記帳し、例えば香典などは「支払証明書」に内容を記入するとともに、挨拶状やその時の状況がわかるものなど証拠になる資料を一緒に保存すると良いでしょう。監査する人が見て、「この支出はNPO法人として支出したことが間違いないだろう」と確認できるようにしておくことが重要です。

最後に
○NPO法人会計基準とは
NPO法人が会計書類を作成する際の統一基準として、昨年7月に発表されました。会計基準は、法律ではないため現在は法的な強制力はありません。一般市民でもNPO法人の活動内容が理解しやすい計算書類をつくることを目的とした画期的な基準です。

○「収支計算書」から「活動計算書」へ
NPO法人会計基準の中で計算書類は「貸借対照表」と「活動計算書」(今までの「収支計算書」を「活動計算書」とする)とされています。複式簿記の原則を採用しています。注記を充実させており、活動の詳細が明らかになるように工夫されています。


●講座で使用した「NPO会計マニュアル」は HP(http://www.npo-support.jp/npo_support/npo_kaikei_manual.php)からダウンロードできますし、NPO法人会計基準の詳しい内容については「みんなで使おうNPO法人会計基準」(NPO法人会計基準協議会)http://npokaikei.info/でご覧いただけます。


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