特定非営利活動促進法第18条で、監事は次の職務を行うこととされている。
一 理事の業務執行の状況を監査すること。
二 特定非営利活動法人の財産の状況を監査すること。
三 前2号の規定による監査の結果、特定非営利活動法人の業務又は財産に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見した場合には、これを社員総会又は所轄庁に報告すること。
四 前号の報告をするために必要がある場合には、社員総会を招集すること。
五 理事の業務執行の状況又は特定非営利活動法人の財産の状況について、理事に意見を述べること。
つまり、監事は業務監査と会計監査を行い、その結果定款に違反する重大な事実があることを発見した場合、社員総会や所轄庁に報告することが職務である。ただし、監事は、監査の心証を得るためにも理事会や重要な意志決定に関わる会議には出席し、その会議において意見を述べるべきである。
通常、監査は総会前に行われるので、社員総会や役所への届出などについては、当年度分の確認ができない場合もある。そのため、監査対象は前年度分及び当年度に発生して確認が可能なものが監査の対象となる。監査というと会計監査だけが監査であるかのような誤解があるが、むしろ重要なのは業務監査である。
業務監査で気をつける項目は大きく4つに分類される。
(1)社員総会
社員総会が定款の定めによって正しく開催され運営されているか。
(2)役所への届出
役所(所轄庁、法務局、税務署、都道府県税事務所・市区町村税務担当部署、社会保険事務所・労働基準監督署・職業安定所など)への届出の期日が守られているか。また、適正な手続きや届出がされているか。
(3)ガバナンス
理事会やその他重要な会議体の運営ルールが明確であり、そのルールに則った運営がされているか。また、職務に専従する者の責任と役割分担は明確であるか。会員管理のルールは明確か。法令は守られているか。事業報告には事業の意図と事業実施過程なども記載されているか。
(4)事業の遂行
事業の遂行。行っている事業はミッションに沿ったものか。経済性や効率性、有効性を心がけているか。委託事業や補助事業などは契約書や交付要綱に沿って行われているか。
会計監査で気をつける項目は大きく5つ。
(1)全般的事項
経理責任者は明確になっているか。決算は理事会等の機関で承認されているか。
(2)資産
現預金は正確に管理されているか。流動資産や固定資産は補助簿などで正しく管理されているか。
(3)負債及び正味財産
流動負債や固定負債は補助簿などで正しく管理されているか。正味財産の計算は正しいか。
(4)収入及び支出
収入と支出について。会費や寄附金の収入は台帳を整備し、もれなく正しく計上しているか。人件費は規定に基づき支払われているか、台帳等の記録が行われているか。管理費や各事業費は適切に区分整理されているか。支払いの証拠書類は適切に整理保存されているか。
(5)計算書類の表示
計算書類の表示について。財産目録、貸借対照表、収支計算書は正しく作成されているか。
監事は、これらの項目に沿って詳細を確認していく。しかし、監事が全てを監査することは困難な場合もある。そのため理事会や事務局で自己評価をし、適切に運営されているかを確認することも重要である。
適切な監査とその結果に基づき改善をすることが、不正を防ぐ土壌づくりや団体の信頼性、透明性を高めることにつながることを十分に意識する必要がある。
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